私たちUMS オンコロジークリニックは、鹿児島で12年以上にわたって様々ながん患者さんを治療してきました。
2014年11 月に名称を変更しましたが、治療内容やスタッフ、その治療理念はまったく変わりません。
私たちが治療してきた患者さんの多くは、「標準治療」に満足されていない方や「標準治療」を望まれていない方です。
具体的には、できるだけ手術を受けたくない、あるいはできるだけ抗がん剤治療を避けたいとお考えの方が大半を占めています。
そのような患者さん達と直接面談し、私たちが自ら開発して実行してきた独自の放射線治療が可能かどうかの相談をして、ご希望になられた方に対して治療を行ってきました。
その数は3500名を超えました。
がんセンターや大学病院などの一般的ながん病院なら外科手術が標準治療とされる初期のがんの方から、抗がん剤などの薬物療法、もしくは緩和医療が標準とされる進行がん・転移がんの患者さんまで、様々な進行度のがんを治療しています。
20世紀の放射線治療は基本的に広い範囲に少なめの量をあてる治療でした。
ごく初期の喉頭がんなどはそれでも治癒しましたが、多くのがんに対しては決め手にはなりませんでした。
ですから、乳がんの乳房温存療法のように外科手術のお手伝い的な使われ方や転移したがんによる痛みを一時的に抑える症状緩和目的の治療として使われることが多かったのです。
この古典的な放射線治療に大きな変化をもたらしたのはガンマナイフの登場です。
スウェーデンの脳外科医が始めた治療で、今では世界中に普及していますが、従来の放射線治療とは正反対で、狭い範囲に大量にあてる放射線治療です。
ですから、当時の放射線科医にはなかなか受け入れられず、欧米の医療先進国でも認められるのに20年近くかかりました。
ガンマー線という肉眼では見えないナイフで手術する治療ということでガンマナイフと呼ばれています。
外科手術は(内視鏡を用いる場合でも)、実際に目で見ながら治療を進めますので、常に正しい位置にメスが当たっているかどうか目視で確認することができます。
しかし、放射線はX線でもガンマー線でも粒子線でも肉眼では見えませんので、いわば透明なメスを握って手術をしているような状況になります。
ですから、日々の治療の際に、正しい位置を正確に捕捉できているかどうかが治療の良否を決定する最大のポイントになります。
私たちは25年以上前にフォーカルユニットを独自に開発して高精度の放射線治療を可能にし世界初の肺がんのピンポイント照射を成功させました。
そしてその後も、肝臓がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がんなどへの適応を広げました。
2006年からは鹿児島で、25年来の放射線治療仲間であるピンポイント照射の開発スタッフとともに、その進化系であるスーパーフォーカルユニットを用いて治療を続けています。
手術や抗がん剤を中心として構成されている現在の「標準治療」に疑問や抵抗感を持ち、「標準」ではない治療を望んだ方が、わざわざ鹿児島まで来られています。
治療した疾患としては乳がんの方が最も多く、切らない乳がん治療は600名を超えました。
また、治療した臓器は、原発性と転移性のものを含めると肺がんが最も多く2000病巣以上です。
これに前立腺がん、肝臓がん、子宮がん、膀胱がんなどが続きます。
子宮がんのうちでも、従来は放射線治療が全く不向きとされた子宮体がんの治療が可能になったのも私たちの施設が初めてです。
(基本的には、患者さんのご希望があれば、全ての腫瘍を検討の対象にしていますが、もちろんオールマイテイな治療など存在しませんので、大きさや形、進行度、全身状態などによっては治療をお断りすることもあります。)
初期のがんの場合、治療した部位そのものに再発することは本当に少なく、肺がん、肝臓がんで2-3%程です。
これは上手な外科手術にも引けを取らないと思います。
また、私たちが把握している限りでは、1期の乳がんで再発は1名だけで、転移も2名しか経験していません。
これは驚くような結果ですが、少々でき過ぎかもしれません。
通常、早期の乳がんでも一定の頻度(1割程度)で原発巣とは離れた部位に転移がでます。
私たちも、もっと大勢の方を治療し、もっと長い間経過を診ていけば、いずれ治療していない遠隔部位に転移する患者さんを経験するだろうと思っています。
ただ25年前に、現在のスタッフと一緒に、世界初の肺がんのピンポイント照射を成功させた時も、当時の外科手術の成績よりも良好な生存率が得られました。
もしかすると、身体に手術の負担を与えないことや無駄な薬物療法を行わないことが、1期の乳がんの治療成績をより良くしている可能性もあるかもしれません。
これもまた、もっと大勢の患者さんを治療して、もっと長い時間経過を診て初めてわかってくることです。
3期、4期の進行がん、転移がんの患者さんも大勢治療におみえになられています。予想以上の結果にとても喜んでおられる方もおられますし、期待ほどの結果にならず気落ちされた方も大勢おられます。
おそらくは、つらいだけの抗がん剤よりも身体が楽だったというのが唯一の共通点ではないでしょうか。
3期4期は病状も様々で、治療内容も様々ですから、結果についてひとくくりのコメントは無意味ですが、一つだけ確かなことがあります。
それは、進行がんや転移がんを確実に治す方法などこの世のどこにもないのに、現実には治る人と治らない人にはっきりと分かれるということです。
そして治った人、病気を克服した人は、ほほ全員が無理でない形で医療の力を利用しながらも、最終的には自分の力で病気を克服しているということです。
その本質は免疫力としか考えられないのですが、それは免疫療法を受けているという意味ではなく、自分の身体の力でがん細胞と闘う免疫細胞にしっかりとスイッチが入ったということを示しています。
がん細胞は自分の体内で発生した細胞なので、免疫細胞が見逃してしまうことがあります。
むしろ、免疫細胞が見逃したからこそ、がん細胞が育ったという言い方が正しいでしょう。
しかし、一度見逃してしまったなら、永遠に見逃したままなのでしょうか。
もしそうなら、3期や4期になってしまってから病気を克服できる人はいないはずです。
けれども、現実は全くそうではない。
リンパ節転移が多発して3期と診断された人たちは、治療によって病気が完治する人と、同じ治療を受けても病気が進行してしまう人に完全に分かれます。
さらに、4期になると3期より完治率はかなり低くはなりますが、それでも完治する人もいます。
特に、単発の臓器転移で4期と診断された方の場合、その後の治療で完治した人は世の中に数えきれないほど存在しています。
ひとり一人の患者さんの免疫細胞にスイッチを入れる確かな方法がないのは、医療従事者として本当に歯がゆくて申し訳ない話ですが、残念ながら、それはまだまだ神様の領域です。世界のどこにも確立された方法などありません。ただ、あくまでも身体に無理でない形で、あきらめずに病気と向き合った患者さん達の中に3期4期を克服した方が大勢いることは間違いがありません。
そして、そのような結果を得るためには、本来の免疫力を破壊してしまうような強力な抗がん剤治療よりも、無理のない放射線治療を丁寧に行う方が、成功につながる可能性が高いはずだと考えて、私たちは日々の治療を行っています。
これからも、その基本理念に変わることはありません。
平成31年1月
UMSオンコロジークリニック 植松 稔