SEALDs街宣・何冊かの本・古賀茂明さん講演会

10月はオンコロジーの機器点検の休診がありましたので、その期間を利用して10月18日の渋谷ハチ公前のSEALDs街宣と23日の池袋での古賀茂明さんの講演会に参加しました。

SEALDsのデモや街宣にはこの夏、何度も参加しましたが、いつも、希望や優しさといった人間にとってポジテイブな想いで、魂が洗われるような喜びがあります。彼らの純粋で知性的な、思いやりに溢れた行動が、すべての人々の幸せや社会全体の健全な形を、無理のない自然な形で希求しているからだと思います。

私はSNSとは無縁な生活を送っていますが、この夏はSEALDsのtwitterを何度も訪れましたので、彼らの正当な発言のあとに、下品で下劣な誹謗中傷が必ず付いてくるのを見て本当に驚きました。悪意に満ちた匿名社会の歪みで呆れるほどでした。

20世紀の末から世界中を混乱させ人々に不幸の種を振りまいているのは、他者への思いやりのない強欲な新自由主義経済そのものである、と私は考えています。そして、多分ネット上のSEALDsなどへの誹謗中傷や非難の多くは新自由主義経済の虜になっている愚かな人々やその家来達が発信源ではないか、と感じています。  

閑話休題。

18日は夕方から、埼玉県にあるヘリテイジ・リゾートという施設の「薪能」という粋な催し物に招待していただいていたので、早めに街宣をあとにし、新宿の紀伊国屋で「民主主義ってこれだ!」を購入して読みながら移動しました。薪能には地元の有名な方々が何人か招待されており、私の正面の席がたまたまお若い自民党の代議士さんでしたので、SEALDsの街宣に参加してきたことを伝え、「自衛隊員が海外で殺し殺されぬように、日本国内でテロが起きないように、しっかりお願いします。」と伝え「承知致しました。」と深々と頭を下げてもらいました。私にとっては、生まれて初めての政治家への陳情(?)でした。

古賀茂明さんの講演は生で聴いたのは初めてでしたが、いつも通りわかりやすくて中身の濃いお話でした。司会者に元経済産業省官僚の古賀茂明さんですと紹介されると、元は肩書きにはならないので、「I am not ABE.」の古賀ですと笑いを取り、二次会ではお酒を飲まずにウーロン茶を召し上がって健康管理に気を配られているな、と感じました。関係ないですが、身長や体型は私と似ていました。

古賀さんのお話で印象的だったことは二つありました。一つは、自衛隊が海外で本当に危険な行動に移行するのは、来年の夏以降、つまり参議院選挙が終わってからになるだろうということ。来年の早い時期に南サマワなどで自衛隊の方々が殉職されるような事態になれば、七月の参議院選挙に大きく影響するので、それまでは事を荒だてない、いかにもありそうな話です。

もう一つは、来年の七月の参議院選挙が衆参同時選挙になる可能性もあり、その場合には、おそらく現政権は「消費税の増税を凍結する」といった禁じ手まがいの姑息な公約を打ち出して当面の選挙戦をごまかして、もし自民党が衆参で勝つようなことがあれば、それから先はやりたい放題、という震えるほど恐ろしい読みもあることがわかりました。まさにナチスのやり方です。

同様の推測は他のジャーナリストの発言でも耳にしたことがあり、本当に怖いなと思います。「税金を上げない」という札ビラで人の頬を叩くような下品な作戦は、いかにも現政権がやりそうです。そして、そのあとにはどんな地獄のシナリオを考えていることか。来年の夏には、絶対に現政権を退場させなければ、本当に日本国民が日本から出て行くしかないかもしれないと感じました。

講演会では古賀さん以外にもうお一人、「草食男子」という言葉をつくった牛窪恵さんという聡明な女性のお話も聴けました。牛窪さんという方は本当に頭の回転が早くて気配りも完璧で、何をやっても上手にできそうな方でした。こういう方が政治家になってくれないかな、と勝手に思いました。

この夏は、私にとって、生まれて初めて真剣に民主主義や憲法、自由と平和について考えた時でした。社会や政治についての本も何冊か読みましたが、私のような初心者の方が、これから本を読まれるのでしたら、お勧めは三冊です。高橋源一郎さんとSEALDsの「民主主義ってなんだ?」「民主主義ってこれだ!」の二冊と、青土社からでている「現代思想・10月臨時増刊号、安保法案を問う」です。

後者は様々な執筆者が様々な立場から、安保法の問題点を指摘するばかりでなく、現在の日本社会の歪みである、貧困、格差、原発、基地、不当労働、憲法無視、米国盲従、苦学生の人生を奨学金で破壊する経済的徴兵制度などの多くの問題点をわかりやすく解説し意見しています。とても読み応えがありました。特に印象的なのは、SEALDs KANSAIの大澤茉実さんの誠実で切実な言霊と呼びたくなる文章です。

もう一つ本書から紹介させていただきたいのが、憲法学者の木村草太さんの論文です。木村さんは、報道ステーションの月曜解説者として日本中で有名で、9月のNHKの特別番組でも「安保法案は違憲法案なので即時廃案」と滑舌よく意思表示されていました。

「トミナガの方違え」という愉快なたとえ話を提示されて、ある時から急に人々の意見に耳を傾ける事ができなくなってしまったトミナガという人間を例に挙げ、彼がなぜそうなってしまったかを解説されました。理由は、人々ではない「何か特殊な存在」を全面的に信じ切ってしまったために、人々の意見に耳を傾ける事ができなくなってしまったというものでした。分かりやすい例え話です。
そして、木村さん自身も今回の安保法制の進む方向には不吉なものを感じていると、論文を締めくくられています。

今日は文化の日。鹿児島では「おはら祭り」という秋の恵みを喜ぶ催し物が行われていて、天文館の電車通りは人で溢れています。2-3ヶ月前の安保法案に反対するデモの時とは比べ物にならないほどの大勢の人出を見ながら、太平洋戦争の直前も、人々はアメリカと戦争をして日本が廃墟になるとは想像もせずに、秋の収穫の祭りを楽しんでいたのだろうな、と70数年前に思いをはせました。

焦ることも慌てることもないですが、日本国内でのテロを防ぎたければ、来年の七月は日本国民にとって正念場だと思います。

2015年11月3日              植松 稔