ネット社会の情報、危険です!要注意です!

インターネットが社会に浸透し、情報が本当に氾濫しています。
多くの方が認識していることでしょうが、そこには正しいこともあれば、とんでもない嘘や出鱈目も珍しくはありません。

先日、ある患者さんの診察で驚いたことがありました。経過が良いのでご自身の診察はすぐに終わったのですが、そのあと帰り際に突然、最近亡くなられたとても有名な方の名前を挙げて、「あの方もオンコロジーで治療を受けられたけど上手くいかなかったのですね」とおっしゃったのです。

かなり驚きました。というのも私たちはその方の治療をしたことなどなかったからです。なぜそう思ったのか尋ねてみるとネットの書き込みで読んだからとの返答でした。

私はネットで流れる情報は怪しいものが多いと思っているので、普段ほとんど読むことはないのですが、いったい何を読んだのかなと思って少し調べてみたところ、それらしい情報源にすぐに出くわしました。

そして、さらに驚いたのですが、そのサイトでは、別の有名ながん患者さんのことも取り上げていて、私たちのところで放射線治療を受けたから、標準的な抗がん剤の治療を受けそびれてしまった、といった内容のことを記載していたのです。

実際は、その有名な方は手術を受けた後、主治医に勧められるままに、再発・転移の予防になるからと抗がん剤の治療をずっと続けていました。けれども再発・転移がでてしまったのです。そこで、抗がん剤以外の治療はないのかと探されて、私たちの施設を受診された方だったのです。

鹿児島に来ていただき改めてPET-CTの検査を行ってみると、手術した局所に再発しており、肝臓にも数カ所転移していることが確認されました。抗がん剤は何の予防にもならなかったわけです。

そしてこれらの病巣は、私たちの放射線治療ですべて消失ないし著しく縮小させることができたのですが、残念ながらPET-CTを撮るたびに、新たな肝転移が広がってしまう経過になりました。

そこで、私の発案で放射線だけでなく、まだ使っていなかった別の抗がん剤をカテーテルで肝臓の動脈に注入してもらうという治療も行ってみたのですが、残念ながら効果はでませんでした。この方のがん細胞は抗がん剤にまったく無反応だったのです。

ネット検索すると、このサイトに気づくことは容易だと思います。本当になんとも出鱈目でいい加減なサイトだと呆れてしまいます。

また別にネットの怖さ、悲しさに出くわしたこともあります。

オンコロジーの患者さんには、切らずに治したい乳がんの女性が多く、治療後にオンコロジーでの治療のことなどを含めたブログを立ち上げている方が以前からかなりいました。

ところが最近、オンコロジーでの治療の結果に大満足されて喜びいっぱいのブログを立ち上げた方に「すぐに削除しないと・・・」というメールが届いたそうなのです。

完全な脅迫行為なので、警察に届けようかとも考えたらしいのですが、わざわざ海外のサーバーを経由してメールしてきたらしいのです。これにも本当に驚きました。

また、手術も抗がん剤もなしで乳がんが治りました、とブログに書いたら、「早く再発・転移することを祈っています」というメールが来たという話も聞いたことがあります。

人の不幸はなんとやら、という本当にがっかりな台詞も人間の本性の一部なのかもしれませんが、今のゆがんだ格差社会で、このような感情が増幅されないことを切に願いたいものです。

普段SNSに極力近づかないように生活している私でも、身の回りにこのようなことが起きている世の中です。皆様もくれぐれもお気をつけください。垂れ流し情報の大半は出鱈目だと思った方が良いのかもしれません。