オンコロ的奇跡の連鎖 9 患者さんからの手記「S字結腸がん術後、肺転移・肝転移からの生還」

 

「S字結腸がん術後、肺転移・肝転移からの生還」

                         2018年5月 T M

 
私のがん治療は大腸(S字結腸)がんの手術から始まりました。2002年10月で55歳の時でした。まだ転移していないので、手術すれば完治するだろうということで、ためらわずにU病院で手術していただきました。

 がんは全部取り切れたということで安心して自宅で過ごしていましたが、半年後の検診で2003年5月に右肺に一カ所転移がみつかりました。1カ所だけなのでやはり手術で治るだろうということで、呼吸器外科のあるK病院で手術しました。この手術も成功しがんは取り切れたということで、これでやっと治ったと思っていました。

 しかし、約1年後の2004年3月に今度は肝臓にも転移がみつかり、この時から抗がん剤の治療が始まりました。それなりに副作用もありましたが、がんを治したい一心でしたので、受け持ちの先生の指示に従って一生懸命に抗がん剤の治療を続けておりました。

 ところが、2005年4月に今度は左の肺に新たな転移がみつかってしまい、これも呼吸器外科で切除しました。そして、1年余りの抗がん剤治療にもかかわらず、肝転移も増大していたので、同年5月に消化器外科で肝臓の部分切除を受けました。

 こんどこそ落ち着いて欲しいと祈るような気持ちでいたのですが、2007年1月にPET-CTで新たな転移が左肺にみつかり、これは以前に手術した肺転移のすぐ近くということで、呼吸器外科医から、今度は手術ではなくUASオンコロジーセンター(現UMSオンコロジークリニック)を紹介され、放射線治療を行うことになりました。

 放射線治療を行うにあたって、植松先生から、私の経過を考えると抗がん剤の治療は役に立っていない、止めた方がいいと説明され、止めてみることになりました。そして、全部で3回放射線治療を受けました。2007年3月、2007年12月、2009年1月です。

 3回とも左肺の上葉の大動脈に近い場所で、いずれも2005年に外科切除した肺転移のすぐ近くでした。同じような部位からばかり転移が出たのは手術操作とも関係があったのかも知れません。

 放射線治療は、外科手術とは比較にならないほど楽な治療でした。けれども、同じような位置を手術し、その後3回も放射線治療をした影響なのか、翌年、左の半回神経麻痺がでて声帯の違和感を覚えました。けれども、その後しゃがれ声も気にならなくなり、日常生活に大きな影響はありませんでした。

 そして、なんと、最後の放射線治療から9年間以上、がんとの縁が完全に切れているのです。あの当時は、まさかそんな経過になるとは思ってもいませんでしたが、毎回のPET-CTで再発・転移はどこにもみつかっていないのです。

 植松先生は、抗がん剤を止めて、身体に免疫力が戻ったことと、放射線治療で一度にたくさんのがん細胞を破壊したことがきっかけで、免疫細胞ががんと闘えるようになり、それが治癒に繫がったと説明してくれますが、自分でもそんな気がしています。

 現在、71歳になりました。毎日穏やかに過ごすことができています。時々開かれるオンコロジーの同窓会にも楽しく出席させてもらっています。「外科手術と抗がん剤」から「放射線治療」に切り替えて本当に良かったと思っています。