日常診療が忙しいこともあって、しばらく社会や政治についての私的見解を控えていましたが、集団的自衛権の行使を可能にしてしまった以降も日本の政治の劣化の進行は凄まじいものがあると感じています。
この最大の原因は、現在の政治体制がなぜか過去に例を見ないほどの一強他弱状態で、しかもそれが継続していることだと考えています。
一強他弱体制というのは、もしもトップに立つ人の人格や理念が素晴らしい場合には、社会にとって民主主義以上に優れた政治形態といえるかもしれません。正しい道を迷わず進んでいくのですから、組織にとって最も理想的な状態であるような気もします。
戦後の経済復興の中で、自らの理念と情熱とアイデアと誠実さでゼロから会社を興し成長産業へと発展させた日本人の起業家が何人もいました。このような人達がトップに立つ社会というものは、少なくとも成長している間、とても理想的に運営されたのではないでしょうか。けれども、そのような組織でさえ、代替わりや成長の停止により腐敗や崩壊へ姿を変えることは歴史が証明しています。
反対に、一強他弱の最悪の例はナチスドイツにつきると思います。最初はそんなはずではなかったとドイツの一般市民も考えていたでしょうが、気がついたときには、歴史上最悪の組織の一員にされてしまっていたはずです。
最近では共謀罪まで無理矢理法制化しようとしている今の日本とナチスドイツ、似ていると感じるのは私だけでしょうか。
昔から嘘つきは泥棒の始まりといいます。
東京にオリンピックを招致する際に、「福島はアンダーコントロール」と言った人は誰が考えても間違いなく嘘つきです。
「日本は世界一治安の良い安全な国である」と言ってオリンピックを招致したその口で「共謀罪の成案なしではとてもオリンピックなど安全に実行できない」と言う人は誰が考えても二枚舌です。
自民党と官僚に任せていたら日本は駄目になると国民の大半が考えたから民主党への政権交代がありました。残念ながら民主党の政権運営は失敗でした。そして、日本人は再び自民党に政権を戻してしまいました。これが最大の失敗であったと私は考えています。
では、どうすべきであったのか。
今の日本には国を任せられるような政党はない、と考えてどの政党にも権力など与えなければ良かったと、私は思います。現在の政党などではなく、人間として評価できる個人、理念や政治信条を共有できる人物に投票すべきだと思います。(もちろん政党名を選ばないといけない場合は別ですが。)
どの政党にも権力を渡さなければ、心ある政治家同士が連携して政界再編も起きやすかったと思いますが、一強他弱ではどうにもなりません。落選したらただの人なのですからボスに楯突ける人など希有でしょう。
そうこうしているうちに、ここ数年で進行した戦前回帰を目指す思想集団の台頭は本当に恐ろしいと思います。教育勅語に感銘を受けるような政治家には本当に吐き気を催しますが、残念ながら大勢いることがわかりました。自民党だけではなく民進党にも日本会議のメンバーが多数含まれているのには本当に驚きました。先の戦争に対する反省と後悔は何処へ行ってしまったのでしょう。
ただ、日本にも立派な方は大勢おられます。個人的には、古賀茂明さんの理性と理念には本当に感銘を受けますし、SEALsやReDEMOsの人々の誠実さには心が洗われます。最近はマスコミでは目立たなくなりましたが、学者の会やママの会、ごく少数ですが本物のジャーナリストもまだ健在です。
とにもかくにもあきらめは禁物。現政権に任せていたら日本中の原発は再稼働してしまうでしょうし、無垢な庶民の無関心こそが、日本社会を本当に戦前の軍事国家に戻してしまう原動力なのだと肝に銘じて、これからの選挙やデモに参加したいものです。