骨転移に対してオンコロジーで治療を継続している乳がんの患者さんからの手記です。
最初の乳がんの治療の際には、典型的な「標準治療」をフルコースで受けられました。骨転移がでてからもホルモン療法は継続しておられますが、残念ながらそれで骨転移が止まるわけではないので、時々オンコロジーの放射線治療も受けていただき、すでに7年以上のおつきあいになりました。
転移がでてからも、この方のようにゆったりとした納得のいく時間を過ごされる方ばかりだと本当に良いのですが、実際にはオンコロジーで治療を続けても、それ以上に早く転移が広がってしまい、あまりお役に立てないことも多いのが現状です。
それでも、抗がん剤で体力を奪われるような治療を続けてしまうと、この方のような経過をたどることはまずないので、一度抗がん剤治療を受けたことのある患者さんの転移に対しては、極力抗がん剤は使わないようにしています。
以前、ある地方の乳がん研究会で、拙著「抗がん剤治療のうそ」の内容について講演した際に、その場にいた乳がん専門医で乳がん学会でも中心人物として活躍されている方と話し込んだことがあります。その方はもちろん「標準治療」を肯定していたわけですが、私に対してこう言われました。
「植松先生も転移がでてしまったら、もうその患者さんは治せないと認めますよね。私も30年以上乳がんの患者さんを治療していますが、転移がでてから治療して治ったと思われる患者さんは一人しか経験していません。」
この専門医は乳がん一筋に何万人という患者さんを診て来たのだろうと思います。そして、この台詞が、転移に抗がん剤治療で対応することの実態をストレートに表現していると感じました。
この手記を書いてくださった患者さんも、完治しているわけではないのですが、抗がん剤を続けていたら、このような平穏な経過にはならなかっただろうと思います。
がんという病気の経過は、がん細胞自体の「たちの悪さ」と、患者さんの持つ「がんと闘う力」のバランスで決まります。抗がん剤治療後の転移は、抗がん剤に抵抗するがん細胞の仕業なのですから、絶対に自分の免疫力を低下させてはいけないと思います。
「友人達から「奇跡だね!」っていわれています」 平成29年12月 K.N
2008年春、一人息子の中学入学前、私に乳癌がみつかりました。手術を受け、標準的な抗がん剤の点滴治療を半年間、その後はホルモン剤の内服治療を継続していました。2010年になり血液検査で腫瘍マーカーCEAが基準値を超えてきたのでPET検査を受けたところ、3カ所の骨転移がみつかりゾメタ点滴で治療することになりました。『癌がどんどん進行したら…この先どうなっていくのだろう。息子が20歳になるまでは元気でいたいな…』このまま標準的な治療だけ続けることに不安を感じ、主治医に相談し、セカンドオピニオンで、あるクリニックの免疫療法と温熱療法も受けることにしました。
1クールの治療が終わり、腫瘍マーカーCEAの数値が少し下がったので効果に期待しましたが、翌月にはまた上昇…。骨の転移も消失することなく、むしろ少し増大していました。免疫療法と温熱療法をこのまま続けるか迷っていた頃に、夫が知り合いのTさんから『鹿児島にあるオンコロジーのピンポイント放射線治療が良い』という話を聞き、夫は私にオンコロジーでの治療を勧めてくれました。
そして、2010年11月にUASオンコロジーセンター(現:UMSオンコロジークリニック)を受診し、植松先生にお任せすることになりました。
2週間、鹿児島に滞在しながらの放射線治療。
私服そのままで放射線治療を受けられることに、初め驚きましたが、着替えなくていいのは楽だし、放射線技師さんたちも白衣でなくYシャツ着用で、オンコロジーの治療スタイルは無駄がなく重い気分にもならず、患者だということを忘れさせてくれてよかったです。毎日の放射線治療は待ち時間合せても30分程だったので、1日のほとんどを、鹿児島観光や、ショッピングしたり、映画鑑賞したり。自由気ままに時間を使えて主婦の私にとって、とてもリフレッシュできた2週間でした。
そして治療後の経過は、腫瘍マーカーCEAが毎月徐々に下がり基準値に。その後のPET検査では骨転移が3カ所とも消失していました。『良かった!私にオンコロジーの治療はあっている』そう思いました。骨転移が消失したので、ゾメタ治療は必要がなくなり、やめることになりました。その後は、ホルモン治療だけは継続し、毎月の腫瘍マーカーCEAの動きを見ながら定期的にPET検査しています。そして別の箇所に新たに骨転移が出現したら、その度、鹿児島に滞在しながらオンコロジーで放射線治療を受けてきました。
1回目が2010年11月、2回目が2012年3月、3回目が2012年10月、4回目が2013年4月、5回目が2014年6月、6回目が2014年12月、7回目は間があいて2017年11月。
これまで7回の治療で、計25ヵ所の骨転移を治療し、消失させてきました。
乳癌の手術を受けてから9年余り、骨転移に対する放射線治療をオンコロジーで始めてから7年以上経過しましたが、日常生活に支障も無く、毎日私は元気に過ごしています。
中学生だった息子も今、大学四年生。就職も決まり春には社会人になります。もしも、この先また新たな転移が見つかったとしても、最初の頃のような不安は、もうありません。
鹿児島でリフレッシュしながらオンコロジーの放射線治療を受ければ消失することが、身をもってわかっているからです。私の乳癌のことについて経過を知っている友人達から「奇跡だね!」って言われています。
私に奇跡を起こしてくれた信頼する植松先生、オンコロジーのスタッフの皆さん、オンコロジーを紹介して下さったTさん、支えてくれている家族、いつも私の力になってくれて鹿児島のオンコロジーに行かせてくれた夫。
ほんとうに感謝しています。